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フリーゲームのノベル・ADVのレビュー(感想)など

カテゴリ:伝奇・異能・活劇

ファントムリム 魔怪篇 下

phantom4

御劔(みつるぎ)の奇襲を受け、傷つき倒れる雪鬼姫(ゆきひめ)。
さらに鈴彦姫も攫われ、魔怪は窮地に陥る。
錬治は雪鬼姫のために、自らの記憶の扉を開けることを決意するが……。


三部作予定の第一部下巻。

これまでの「御劔神道」VS「魔怪」の対立に加えて、「神呪寺」という第三勢力が新たに登場しました。
御劔神道を遥かに凌ぐ、日本の霊的支配を担う一大密教ネットワーク。
この巨大勢力が人間と魔怪の対立にどのように関わってくるのか、見物ですね。

サラリーマンとして完璧に人間社会に溶け込んでいる土蜘蛛、和風ゴスロリ少女の鵺(ぬえ)、神呪寺の任務より限定フィギュアを優先する外人オタクの雷蔵などなど、また個性的なキャラがたんまり増えました。
下巻だけで新キャラ8人。
御劔のおかっぱ少年の南北も生意気で可愛い可愛い。

中でも、真打ち登場の佐須良姫(さすらひめ)は強烈でしたね。
人間でありながら、あまりにも異形なその姿に背筋が寒くなりましたが、話してみると案外理性的で、味方としては頼もしい存在かもしれない。

傷を負いながらの逃走、鈴彦姫の誘拐など、魔怪にとって危うい状況が続く下巻ですが、どんな危機も冷静沈着に切り抜けていく雪鬼姫の機転と統率力には惚れ惚れ。
こんなにも美しく有能な彼女が、常に錬治を気遣い、大事にしてくれているわけですから、錬治が骨抜きになるのも解ろうというものですが、このあたりから、何やら嫌な予感がじわじわと。

魔怪篇上巻では、人間たちに見殺しにされそうになっていた錬治を雪鬼姫が救い、魔怪たちが温かく迎えてくれました。
平穏な生活を願う心優しい魔怪と、魔怪を排斥しようとする冷徹な人間──そのような構図が描かれていました。
しかし、下巻に入ってから、ほんの少しずつ違和感が混ざり始め……。

「これは……来る……来るぞ……」と思いながらプレイしていたのですが、やはり下巻ラストで来た~~~

いやあ、清々しいほどの見事な[切り捨て]っぷりでしたね(笑)
管狐を助けた心温まるエピソードも、見るも無惨に砕け散りました。

次回の「御劔篇」では錬治はさぞかし辛い立場に置かれるでしょうけれど、まあ、自業自得ですね。
もし善良な主人公がこのような目に遭っていたら同情しただろうと思いますが、錬治の人格を思うと、せいぜい痛い目に遭って成長してね、というところか。
下巻を読了した後に、上巻で魔怪たちにモテモテな錬治さまを読み返すと、また別の意味で楽しめます。


【HP】九字 
【ジャンル】伝奇ノベル(選択肢なし)
【価格】735円(税込)
【プレイ時間】3時間 
【ツール】吉里吉里2/KAG3
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カテゴリ: 同人ゲーム  伝奇・異能・活劇 

CD-Manatsu

cdmanatsu

「リアルドラクエやるわ」と言って僕を勇者に任命して家出したライムちゃん。
僕が倒すべき魔王は、ライムちゃんらしい。
ライムちゃんが家を出た後、残された僕は叔父さんたちの養子になった。
中学校に入学する前日、僕の部屋に真夏さんの首無し死体がやって来る。
彼女に頼まれ、僕は真夏さんの頭部を一緒に探すことに……。


『CD-Lime』の続編。

お前が真夏さんかよ!
というわけで、真夏さんの正体は、ライムちゃんに首チョンパされて殺された魔法少女の白女でした。

この首無しゾンビの真夏さんが、なんとまあ、下ネタ大好きな変態お姉さんでして、彼女がボケたおしてくれるおかげで、キリのツッコミが冴える冴える。
二人の掛け合い漫才が面白すぎて、笑いっぱなしでした。
しかし、真夏さんの頭が見つかって以降は一転して不穏な雲行きに。

後半の展開は、予想以上に熱くて、予想以上に悲しかった。
偽物]の命で精一杯生きた夏さんが悲しかった。
大事な人を救えないキリの慟哭が悲しかった。
キリに感情移入しすぎて、なんかもう最後のほうは涙でボロボロでしたよ。
夏さああああん!!

夏さん]が[最期]に自分の魔法について教えてくれたということは、キリは[真夏]の魔法を[一度きりの使い捨てコピー]ではなく[完全に取り込んだ]ということなのでしょうね。

L(ライム)、M(マナツ)と来て、次回はN(ナガハ)。
その後、「O」「P」「Q」で完結との事。
「O」はおそらくネクロマンサーのオセロットでしょうけれど、「P」は誰だろう。
シリーズの最後を締めくくる「Q」は、キリでしょうか?

クリア後、タイトル画面のキリが[夏さんのマフラー]を着けているのを見て、また泣きそうに。


【HP】小倉ハムスター 
【ジャンル】魔法少女ノベル 
【プレイ時間】2時間10分 
【ツール】NScripter 
【容量】28MB 
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カテゴリ: 伝奇・異能・活劇 

CD-Lime

cdlime

ミヨちゃんは首を吊って死んだ。
妹はバイクに轢かれて死んだ。
友人たちはイカレ野郎の爆弾で死んだ。
僕の大事な人たちは、みんな死んでしまった。
住んでいた島から追いやられた僕は、従姉のライムちゃんの家に預けられることになった。
ライムちゃんは毎日小動物を殺して黒魔術を行う電波女だった。
ある日、僕とライムちゃんは裏山で奇妙なCDを見つけて……。


ポップでブラックでカオスな猟奇ノベル。

中学二年生のライムちゃんは、天上天下唯我独尊な気まぐれワガママ残虐少女。
小学六年生の少年キリは、ライムちゃんのドレイ兼オモチャとして彼女の奇行に振り回される淡白な主人公。
日頃から小動物を殺しまくっている精神異常者のライムちゃんが、魔法少女になって人間を自由に殺せるようになってしまったから、さあ大変。
デスノートも真っ青な大量殺人鬼の誕生です。
全国の魔法少女たちが危険人物のライムちゃんを殺しに来るよ!というお話(なのか?)

とにかくライムちゃんがぶっ飛んでいて、とんでもない行動ばかりで飽きませんでした。
二周目は王道ながらも熱い展開で燃えた。やはり主人公はこうでないとな!
そして、まさかドラクエが伏線だったとは(笑)

白女のアレな最期にはギャッ!と飛び上がりましたが、クリア後の白女イラストはほのぼので和んだ。
彼女、[]が取れているほうが可愛いのでは。

全体的にサクッと残酷で、個人的に好みでした。
今作はシリーズのプロローグ的な位置付けなのでしょうか?


【HP】小倉ハムスター 
【対象】18推 
【ジャンル】魔法少女ノベル 
【プレイ時間】周:1時間15分/総:1時間35分 
【ツール】NScripter 
【容量】29.2MB 
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カテゴリ: 伝奇・異能・活劇 

皆殺しのワルツ 第一話「ニセモノ」

minagoroshi

殺人鬼でありクラスメイトである祇咲永久(しざき・とわ)と友人になったのは、昨年の五月のこと。
高校生の飴野甘露(あめの・かんろ)は、従姉の刑事から、この町で多発している人喰い事件の捜査協力を求められる。
永久はクラスメイトの嶋島縞子(しまじま・しまこ)が怪しいと言うが……。

西尾維新テイストの学園異能伝奇ノベル。
戯言遣いっぽい主人公と零崎人識っぽい殺人鬼が猟奇事件の犯人探しに乗り出します。

“ニセモノ”の甘露と、“殺人鬼”の永久。
気安さの中に緊張感のある二人の関係が面白かった。
永久はかなり魅力的なキャラだっただけに、彼の突然の死には呆然としました。
それが、まさかあのような形で甘露の“ニセモノ”たる所以に繋がるとは。

永久の人格と殺人能力は今後も活躍してくれるのでしょうけれど、オリジナルの永久に会えなくなるのは、やはり寂しいですね。
甘露のキャパシティは、一体どれほどあるのでしょうか。
まだまだ余裕で何人も複製できたりする? 
殺人鬼の永久をコピーするのは一年近くかかったようですが、容量の少ない一般人なら、もっと短期間で複製できるのでしょうか?

真犯人の正体は判りやすく、予想通りでした。
断罪する前にちゃっかりエッチを済ませているあたり、戯言遣いより甘露のほうが外道だったりして。

ドSなロリご主人様の言葉責めが素敵です。


※2008/12/1配布終了

【HP1】ACQUIESCE 
【ジャンル】ノベル 
【プレイ時間】1時間45分 
【容量】27MB 
【ツール】NScripter
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カテゴリ: 伝奇・異能・活劇 

ノルカソルカ

norusoru

貧乏で不幸まみれの女子高生・相川幸は、迷い込んだ神社で天狗の少年に出会う。
天狗は「鬼を探し出してくれたら、願い事をひとつ叶えてやろう」と言った。
幸せを手に入れたくて、鬼を探し始める幸。
しかし、幸の前に次々と妖怪憑きの人間が現れ……。


ザッピング形式の伝奇ジュブナイル。
初回の幸ルートで謎だらけのバッドエンドを迎えた後、四人の妖怪憑きのルートを選択できるようになり、全てのルートを読み終えると最終ルートが開きます。

幸も、幸に関わる少年少女たちも、それぞれが悩みや苦しみを抱え、すれ違い、冬至の夜に悲しい運命を辿ってしまう。
最終ルートに現れる選択肢で各人の当日の行動を選ぶことで、彼らの交錯した運命を変えることができます。

登場人物それぞれの視点によって少しずつ新たな事実が判っていくのが楽しく、飽きずに読み進めることができました。
何度か失敗しながらも、最終ルートで彼ら全員を幸せな未来へ導けた時は嬉しかった。
前向きで気持ちの良い作品でした。
妖怪たちのバックグラウンドも、もう少し知りたかったような。


【HP】郷愁花屋 
【ジャンル】和風伝奇ノベル 
【プレイ時間】周:幸:45~50分、葵:25分、聖:20分、霞:17分、円:10分、栞:1時間/総:3~4時間
【ツール】吉里吉里2/KAG3 
【容量】67.4MB
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カテゴリ: 伝奇・異能・活劇 

ファントムリム 魔怪篇 上

phantom3

親しい友人だったはずのクラスメイト三人に拉致された錬治。
連れて来られたのは、宗教法人『御劔神道(みつるぎしんとう)』の神社だった。
錬治は御劔の『河守の御三家』の人間であり、幼い頃は河守の力を有していたが、十年前のある日を境に記憶と力を失ったという。
河守の力を復活させるために恐ろしい儀式に晒された錬治は、人間に失望し、魔怪の雪鬼姫(ゆきひめ)に助けを求めるが……。


三部作予定の第一部上巻。
秘められた力を持つ(らしい)主人公の錬治が魔怪と人間の闘争に巻き込まれる物語。

テンポの良いシナリオで、サクサク読めます。
今回の「魔怪篇」では錬治は魔怪サイドに付きますが、人間サイドに付くシナリオもあるのでしょうか?

魔怪のメンバーが皆、非常に人間臭く気のいい奴らで楽しい。

主人公の錬治は、体験版(第一章~第二章)では世の中を舐めたクソガキでしたが、今後少しは成長してくれるのでしょうか。
現段階ではひたすら状況に流されているだけですので、下巻以降に期待してみたいところ。

少々クセのある絵柄ですが、女性キャラも男性キャラも色気があって良い。

本作にはスチルはありませんが、立ち絵を使って演出を駆使されています。
戦闘場面では立ち絵が縦横無尽に動いて目を奪われる一方で、鼠の大群がワサワサ出てきたり、氷の柱が砕けたり、画面に動きがあって華やか。
遥拝殿で蛇帯が出てくる場面もゾクゾクしました。
なかなか臨場感があって面白かった。
こういう手法もアリですね。

また、大量の背景写真も特長。
細かなワンシーンにも漏れなく写真が用意されており、シナリオに応じて次々と切り替わります。
魔怪編上巻だけで何百枚あるのでしょうか。
基本的に写真背景はあまり歓迎しませんが、ここまで豊富に揃っていると文句はありません。

思いっきり続きが気になるところで終わっており、下巻は夏発行予定。
は、早く続きを……。


【HP】九字 
【ジャンル】伝奇ノベル(選択肢なし) 
【価格】500円 
【プレイ時間】3時間 
【ツール】吉里吉里2/KAG3 

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カテゴリ: 同人ゲーム  伝奇・異能・活劇 

ファントムリム 体験版

高校二年生の流崎錬治は、近頃しばしば記憶の欠落が起こる。
仲の良い友人たちと退屈ながらも平穏な学園生活を送っていた錬治のもとへ、ある日、雪鬼姫(ゆきひめ)と名乗る美しい魔怪が現れた。
「囚われの身の錬治様をお助けにまいりました」


伝奇ノベル。体験版は第二章まで。

主人公の人間性が矮小で、やたらと癇に障ります。
臆病で怠惰な自分に言い訳ばかりして達観したつもりになって、他人を見下している駄目男。
わざとそのような人間に描かれているようですが、今後少しは成長していくのでしょうか?

体験版のラストで主人公が痛い目に遭って、ちょっとスッキリ(笑)
こんな男が美少女二人にモテるのはあり得んだろう、と思いながらプレイしていたのですが、裏があったと知って大いに納得。

人間と魔怪の勢力が交錯して面白くなりそうです。


【HP】九字
【プレイ時間】1時間 
【容量】130MB 
【ツール】吉里吉里2/KAG3
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カテゴリ: 同人体験版  伝奇・異能・活劇 

Boredom Killer's Delay Rain ボアダムキラーズ ディレイレイン 体験版 第1話「DEAD SOULS AND RAINMAN」

坂木和也が14歳になった日、街に飛行機が落ちた。
53人の集団自殺、連続えぐり魔事件、飛行機墜落事故。
近頃、この街で奇怪な事件が多発している。
和也と同じアパートに住む科学者の富爺の実験により、テディベアが2メートルのクマに巨大化して動き出した。
クマはなぜかアパートの住人たちと意気投合し、和也の隣の部屋に住み始める。
雨男と化け物とクラスメイトとクマ。
「世界を終わらせるのさ、奴は。俺はそれを止めに来た」


ファウスト系伝奇ノベル。
主人公のクールでフラットな独特の語り口が面白い。

曖昧で不思議で不可解な日常と非日常。
読んでいると、頭がグルグルしてきます。

第一話終盤の“アレ”には唖然。そして爆笑。

いろいろな意味で飛び抜けたセンスの作品。
完成版に期待大。


【HP】BEPP WEB SITE 
【プレイ時間】1時間半~2時間 
【ツール】吉里吉里2/KAG3 
【容量】128MB
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カテゴリ: 伝奇・異能・活劇  同人体験版 

神様ノ子守唄-ツギハギ殺人事件-

tsugihagi

高校生の光吉は、一手先の未来を予測できる『勘』のような能力を持っている。
都内東部を中心に頻発していた連続猟奇殺人事件、通称『ツギハギ殺人』の被害が、とうとう光吉の住む雪那町にも訪れた。
好奇心旺盛な幼馴染の洋子は、光吉の能力で犯人を捕まえようと意気込むが……。


「神様ノ子守唄」シリーズ一作目。
ミステリー作品だと認識してプレイしていたら、そんなのアリ!?というオチにひっくり返りました。

ミステリーとしては、かなり異色です。
とはいえ、最近の風潮では、このようなミステリーも全然アリな気はしますね。
主人公の存在自体が伏線ですし。

個人的には、こういった世界観そのものをひっくり返してしまうどんでん返しは好きです。

今回はシリーズの導入部ですが、次回以降はバリバリの異能伝奇ものになったりするのでしょうか。
せっかく可愛い絵なので、スチルもあれば嬉しい。


【HP】熊月温泉 
【プレイ時間】3時間 
【ツール】NScripter 
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カテゴリ: ミステリー  伝奇・異能・活劇 

冬は幻の鏡

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北海道野別市にある市立南陽高校では、四年前から、ある噂が流れていた。
四階の女子トイレに交通事故で死んだ男子留学生の幽霊が出るという。
ほとんど忘れられていた幽霊話だったが、今年の夏に転校してきた女生徒の証言によって、再び噂にのぼり始めた。
終業式を控えた三月のある日、放送部の部員たちは幽霊を見るために夜の学校へ忍び込む。
それが事件の発端だった……。


【小太郎ルート】
一大決心をして風俗店「フェランス革命」へ行った小太郎は、風俗嬢の早織と知り合う。
早織は南陽高校の卒業生で、留学生の幽霊クリス・ジョンソンのかつての恋人だった。
幽霊の彼に会いたいという早織に付き合い、小太郎は夜の学校へ忍び込むことに……。

【和歌奈ルート】
和歌奈と鈴夫は留学生の幽霊のドキュメンタリーを企画し、居残った夜の学校で本物の幽霊と遭遇する。
転入生のゆうに助けられ、幽霊騒ぎは無事に解決したが、和歌奈は道明の恋人である小月の正体に疑問を持ち始め……。

【道明ルート】
登校拒否児の小月と肝試しに行った夜の学校で、幽霊騒ぎに巻き込まれた道明。
その日を境に、道明の心に激しい性衝動と殺人衝動が芽生える。
小月を犯して殺したい衝動に苦悩する道明の前に、ゆうの兄を名乗る男が現れ……。


北国の高校を舞台とした学園ホラー伝奇ノベル。R-18。

2003年3月10日(月)から15日(土)までの六日間の物語を、小太郎・和歌奈・道明の三人の視点から読み進めていきます。
それぞれのルートをプレイするごとに様々な謎が明らかになっていき、各々の心理の違いや行動の意味が解っていくのが面白い。

どのルートからプレイしても構わないとは思いますが、小太郎→和歌奈→道明の順に陰惨度が増し、真相へも近くなっていくので、一応この順番をお薦めします。
それぞれのルートは独立しているので、小太郎(1日目)→和歌奈(1日目)→道明(1日目)→小太郎(2日目)→和歌奈(2日目)……という並行プレイでも良いかも。

どのルートも面白く読めますが、中でも小太郎ルートは漢一直線。
勢いがあり、ぐいぐい読ませます。
親友の道明に遅れをとりたくなくて風俗へ行ったり、彼女が出来た道明に複雑な思いを抱いたり、人を好きになるということについて悩んだり。
等身大の男の子である小太郎が可愛らしい。
何も考えず馬鹿騒ぎばかりしているように見えて、周りの人を気遣う優しさ、責任感の強さは人一倍。
小太郎は本当に、いい男です。
親友の道明を大切に思い、初恋の音さんを大切に思い、後輩の鈴夫や和歌奈を大切に思い、皆がニコニコハッピーエンドになれるように頑張る小太郎の姿を見ていると、胸が熱くなりました。

三つ全てのルートを終了すると、“四人目”の視点の最終ルートが現れます。
南陽高校で起こった事件の背景。
“彼”と“彼女”の現在と過去。
これまでの謎が全て解明され、事件の全体像が明らかになります。
各所に張られていた伏線をザクザク回収していくのが楽しく、時間を忘れて一気に読んでしまいました。
ラストは鈴夫視点のエピローグで締められており、物語の始めと終わりが繋がって綺麗にまとまっています。

この作品に登場する男性たちは皆、何らかの業を背負っています。
一人は偽りの笑顔に全てを隠し、一人は取り戻せない過去に縛られ……。
そうして苦しみながらも、彼らにとってただひとりの女性を深く愛している。

それに比べると、女性陣はいまひとつ魅力に欠けるような。
マイペースすぎたり、自己中すぎたり、類型的すぎたり。
彼らが命をかけて愛するほどの価値が、彼女たちにあるのかと思ってしまうのです。
女性陣にはもう少し頑張って欲しかったかもしれません。
ゆうの不器用さは可愛くて好きですが、極悪変態Mだしなあ(笑)

読者を引き込む筆力は素晴らしいと思いますが、唯一、文章には大いなる問題があります。
何をトチ狂ったのか、一人称と三人称がゴチャ混ぜで使用されていること。
章ごとに人称が変わるというものではなく、一人称の文の最中にいきなり三人称が乱入してきたり、三人称の文章の中に一人称の視点が混ざっていたりというカオスな状態です。
ここまで滅茶苦茶な視点の乱用は、アマチュアの中でも初めて見ました。

視点の統一は、小説を書く上で基本中の基本。
そのルールを破ると、本作のようにカオスな有様になります。

読んでいるうちに次第に慣れてきて違和感を覚えなくなってくるのが、これまた怖い。
変な文章を長時間読むと、こちらの感覚まで変になる。
その意味でも、はっきり言って迷惑なテキストです。
次作からは、これだけは直してほしい。


システム

三人の視点から一つの物語を読み進めていくマルチルートノベル。
最初に鈴夫視点のプロローグがあり、その後、小太郎ルート・和歌奈ルート・道明ルートへ分岐します。
チュンソフトの『街』のように選択肢によって別ルートの展開が変化するわけではありませんが、ザッピングの面白さは存分に味わえました。

バッドエンドへ行くと小月と夕のヒントコーナーがあり、その後に「このまま始める」「タイトルに戻る」という選択肢が出ます。
「このまま始める」を選ぶと直前の選択肢から再開されるのかと思いきや、なぜかプロローグの一番最初まで戻ってしまいます。
普通、何時間もプレイしてきてバッドエンドになったプレイヤーが、またプロローグから始めたいなどと思うでしょうか。
実に不可解な仕様です。

セーブスロットは20個ありますが、普通にプレイしていると全く足りません。
各ルートで1日ごとにセーブするとして、6日間のデータを4人分残すだけでも最低25個は欲しいし、もちろんそれ以外にも選択肢ごとにセーブしたい。
少なくとも50個以上は無いと困ります。

ロード時にはダイジェストウィンドウが現れ、その場面の要約を読むことが出来ます。
どれがどのシーンのデータなのか克明に判るのは有り難かった。
普通の要約だけでなく、たまに変なお遊び文が混ざっていたりして楽しめました。

他にも文章量考慮式オートクリック機能など、少し変わった部分に手が入っています。

ただ、スキップに既読未読の判別が無い、誤字脱字が多すぎるなど、基本的な部分で難多し。
特に誤字脱字の多さは、かなりのものです。

グラフィック

それなりに良い絵もあれば、あまりに酷い絵もあり、ばらつきがあります。
同じキャラでも絵によって全く違うので、戸惑うこと多し。
ジャケットで冷笑している彼、誰かと思ったら鈴夫でしたか。
別人すぎて、クリアするまで分かりませんでした。

シナリオと絵の描写の食い違いも目立ちます。
シナリオでは小太郎がズボンを半分脱いでいるだけなのに、スチルでは全部脱いで裸になっていたり。
シナリオでは聡美がゆうに正面から抱きついているのに、スチルでは横から抱きついていたり。
シナリオでは道明が和歌奈の後ろ髪を引っ張って顎を上げさせているのに、スチルではサイドの髪を前に引っ張っていたり。
その他諸々。
人物の表情がシナリオの描写とスチルで全く異なっていて違和感を覚えることも多々ありました。

総評

荒削りですが、今まで見たことの無いようなアクの強さと泥臭い魅力があって新鮮でした。

登場人物の半数が男性で、しかも女性キャラより男性キャラのほうが魅力的に描かれているあたり、男性向け作品としては異色かもしれません。
男性向けで男性キャラがしっかり書き込まれている作品は、個人的に好感度大。

随所でやたらと不備の多い作品でしたが、ストーリーのパワーは群を抜いており、非常に惹き込まれました。
ボリュームもあり、読み応えは充分。
シナリオを重視する方にお薦めします。
女性にもオススメ。


【HP】半端マニアソフト
【対象】18禁
【価格】2000円⇒無料(2010年フリー化)
【ツール】NScripter
【プレイ時間】周:4~5時間/総:20時間
【音楽】オリジナル23曲、主題歌「白い記憶」
【スチル】111枚 (差分含む)
【備考】OPムービーあり、WEB体験版あり
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カテゴリ: 伝奇・異能・活劇  R-18